ぽんごぽんご族の物語

ぽんごぽんご族物語-其の参

こうしてついに「ひみつのいりぐち」からちゃんちき堂の「ひみつ工場」に向かってぽんごぽんご族は出港した。

 

しかし、出港した翌日には彼らを悲劇がおそっていた。

いつものようにcafeころんへ向かおうとしていると梅林の路肩に「茶色ニワトリ号」が座礁しているのを発見したんだ。彼らは必死に船をもとの道に戻そうとしていた。

ぼくが手伝えばなんのこともなく復帰できそうなものだが

「自分たちでなんとかするからお前はお前の仕事をしろ!」

となんとなく、ドラマでしか聞かれないような台詞で追っ払われた。

後で聞いたところだと、山のような白いすごい音がするものが道路を横切っていき(たぶん、ご近所さんの車のことだろうと推測する)、そのあおりを受けて座礁してしまったそうだ。

さらに数時間後に一度ひみつ工場に戻ってくると、完全に「茶色ニワトリ号」は転覆してるじゃないか!

こりゃさすがに何とかしなければ!と思って駆け寄ったんだけど、やっぱり彼らに追い払われてしまった。

イロイロ試行錯誤した結果、この状態で大波を待っているそうで、彼らの計算だとその波に乗れば一気に立て直せるそうだ。そもそも、木片でできているこの船が沈むことはまぁないから安心してみておけと。

こんな姿勢でそんな偉そうに「計算通りだ」的な発言をされてもなんなんだけれど。。。まぁ、あんまりにも自信たっぷりなので、様子を見ることにしようとぼくもリアカー(チキチキ5)で行商の旅に発進することにした。

そして、6時間ほどの行商から帰ってくると確かに座礁していた梅林のところから「茶色ニワトリ号」はいなくなっていた。

でも、ちょっと嫌な予感。。。

まさか、近所の子どもたちにさらわれてしまったのでは。。。その上、家に持ち帰られた「茶色ニワトリ号」をみたお母さんに

「こんなゴミ拾ってきちゃダメでしょう!」

って怒られて、そのまま青梅市の燃えるゴミ袋に直行してしまったんじゃないか。。。

そうしたら船は燃えてしまう。乗り込んでいたぽんごぽんご族のみんなも。。。

と暗鬱な気分で家路をとぼとぼ歩いていたら、元気に草原をひた走る「茶色ニワトリ号」とぽんごぽんご族のみんなに出会うことができた!

彼ら曰く、道路よりこっちの方が車が通った時の煽り波の影響をうけないってことを発見して、それからはなるべく道路に出ない航路を選択しているそうだ。

大波も無事にいい角度でやってきて、こうして持ち直したそうで、やっぱり不安もあったんだろうか。。。

興奮して自分たちの冒険話を延々と語る彼ら(舵はちゃんと取ってほしいとその間なんどか釘を刺したことはいうまでもない)に付き合っていたらなんと「ひみつ工場」が見えてきた!

 

ひみつ工場の前に広がる大海原に漕ぎ出て、軽快に白波を立てて走る「茶色ニワトリ号」のこの有志。

もう少しで岸辺に着く「茶色ニワトリ号」

そして、ついに日暮れを前にして「ひみつ工場」につながる岸辺に彼らの船「茶色ニワトリ号」は到着したんだ。

なんと感動的な光景だったことか。。。

ぼくと彼らはひとしきり手をつないで踊りながら、その冒険のエピソード、それに立ち向かった彼らの勇気を称えあった。

そしてさっそくひみつ工場周辺に移り住もうとしている彼らから1つ質問があったんだ。

「それでシフォンケーキっていうのはどれなんだい?」

と。

あ。。。うっかりしていた。。。

この日は彼らの冒険のかたわらでぼくらもずいぶん頑張ってしまって、なんとシフォンケーキは完売してしまった後だったんだ!

「なんだ!じゃあみれないのか!?」

「でも、工場なんだろう?今から作ってくれよ!」

要望はごもっともだ。。。ぼくが熱く語ったシフォンケーキに会いに彼らはここまで荒波を越えて航海してきたんだから。ぼくも行商の後でへとへとではあったけれど、作れるものなら作って見せたかった。

しかし。。。

「実はここは元工場なんだ」

「今はcafeころんっていうところで作っていて、ここでは作っていないんだ」

「な、なんだと!」

彼らの驚きようったら、そして失望感ははんばなかったと思う。。。そりゃそうだ。この航海のために船を仕立て、決死の航海をした結果、その目的のものであるシフォンケーキに出会えなかったんだから。。。

ちゃんと説明しなかったことを後悔し、そしてどんな罵声でも浴びようと彼らの議論が終わるのを待っていたぼくに彼らは言ったんだ。

「話はまとまった」

「う、うん」

「ここにもシフォンケーキが来るのであれば、我々はここにも住むことにする」

「ふむふむ」

「しかし、やはり作っている工場に非常に興味がある」

「なるほど」

「なので、今から公開を続ける!」

と!

「まじで!?」

「もちろんだ」

そこからぼくは説明した。ひみつ工場からcafeころんへの道のりは、ひみつのいりぐちからひみつ工場までと距離にして何十倍も遠いこと。それこそ、ぼくら人間の感覚では太平洋を横断するくらいの距離があること。

その間には今回以上の苦難がたくさん待ち受けてあるであろうことを。

でも、ぼくはたった一言の彼らの言葉で沈黙した。

「それがどうしたんだ!」

何という不屈の精神。そして、未知なるものへの好奇心と探求心を持っているんだ。。。

 

今、ぼくの目の前で彼らのcafeころんへの旅の準備が始まっている。。。

壮大な物語はまだまだ続くようだ。。。

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